糖尿病とは
糖尿病とは、インシュリンが不足して身体の中がガタガタになる病気で、食べ物から消化・吸収された糖質(ブドウ糖)が体内で有効に活用されないために、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。
このブドウ糖が有効に活用されるために、大切な働きをしているのが、膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されるインスリンというホルモンです。
糖尿病とインスリン
血糖値を上げるように働くのは、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、グルカゴン、アドレナリンなど複数あります。ところが血糖値を下げるように働くのはインスリンだけです。インスリンは体内のブドウ糖の消費を助け、血糖値を下げる働きをします。
何らかの原因でインスリンそのものが不足したり、インスリンの作用を受ける組織に異常があったりすると、血液中のブドウ糖を処理できなくなるため、血糖値が高くなり、その結果糖尿病になります。
糖尿病の検査
- 尿糖の検査 : 食後2時間の初めての尿で検査します。試験紙法(テステープ、コンビステックスなど)
- 血糖の検査 : 空腹時の血糖が126mg/dl以上、または任意のときに受けた血糖値が200mg/dl以上という数値が2回以上あれば、糖尿病と判定されます。空腹時の血糖が110mg/dl以上であるが、126mg/dlを超えない場合には、糖尿病とはいえませんが、正常とも言えません。
- ブドウ糖負荷試験 : 軽度の糖尿病や予備軍を発見するために行います。ブドウ糖を飲んだ後2時間後には140mg/dl以下が正常ですが、200mg/dl以上だと糖尿病、その中間だと境界型と判定されます。
- ヘモグロビンA1c(HbA1c)の検査 : 過去1?2ヶ月間の血糖値の状態を知ることができます。 基準値: 4.3〜5.8%
糖尿病を引き起こす危険因子
糖尿病は、加齢や遺伝なども関係していますが、もっとも大きな影響を与えているのは、肥満、過食、運動不足、ストレスと言われています。
糖尿病の予防や治療は、これらの発症因子を上手におさえることが大切です。
糖尿病の症状と合併症
糖尿病の症状は、初期ではほとんど自覚症状が見られにくいです。糖尿病が進行してくると、口渇、多尿などがよく挙げられます。その他、体重が急に増えたりやせだしたり、疲労倦怠、皮膚病(皮膚がかゆい、化膿しやすく治りにくい)、神経痛(手足のしびれ)などが現れたりします。
糖尿病が怖いのは、合併症です。そこで、早期発見のために定期的な検査を受けることが大切です。
糖尿病で恐ろしいのは、自覚症状がないからといって放置しておくと体の重要な臓器に合併症を引き起こします。特に血管系への影響は重大で、目の網膜の出血、腎臓の血管の破裂、動脈硬化の進行のために、脳梗塞、心筋梗塞、足の壊疽など全身に様々な障害が起こりやすくなり、生命にもかかわってきます。
漢方ではこう考えます
漢方では昔から糖尿病を消渇という病名で呼んでいました。消渇(しょうかつ):水が小便にたくさん流れるように出て消え去ってしまう、口渇の激しい病気という意味で、いわゆる多尿・口渇の状態を指しています。
消渇に昔から頻用される漢方処方に次のようなものがありました。初期の消渇には、白虎加人参湯 慢性消渇には、八味地黄丸 また最近では、糖尿病には八味地黄丸、牛車腎気丸というように、八味地黄丸などを中心にする薬方が安易に使われるようになっています。
しかし、その結果消化器症状、皮膚症状などの苦情が多く訴えられるようになりました。
なぜ副作用が出現したのでしょうか?
八味地黄丸の使用ポイントを見ますと、(1)胃腸虚弱ではないのに疲れやすい(2)尿利異常(3)口渇あり(4)下腹部、足のしびれ(5)足腰弱い これらの条件のあるときに使う処方です。そして、腎(排水、ホルモン関係)の機能衰退を目標に用いる、太陰病(腎虚症)で実証のときに使用する漢方薬です。
体力の低下した虚弱な人や胃腸の弱い人には使用できない薬方が八味地黄丸なのです。
漢方療法も使い間違えれば副作用が出ます。現代人の多くは胃腸が弱いことを忘れてはなりません。
糖尿病の養生法
糖尿病を改善していくためには、毎日の食事や運動の養生が大切です。
- 適正な1日摂取カロリーを守りましょう。
- 標準体重を維持しましょう。
- 決められたカロリー内で栄養バランスを考えましょう。
栄養のバランスを崩さないよう三大栄養素をうまく配合します。各種ビタミン、ミネラルの補給も。
- 食事の量や間隔を均等にしましょう。
- ストレスをためないようにしましょう。
- 適度な運動をしましょう 。
肥満とアディポネクチン
糖尿病の発症には、「インスリン分泌低下」と「インスリン抵抗性」の2つが関与していると考えられています。
最近の糖尿病の増加は「インスリン抵抗性」を主な原因とする人が増えていると考えられます。
この「インスリン抵抗性」を引き起こす原因として、遺伝の他、肥満、運動不足、高脂肪食、ストレスなどが上げられます。
特に肥満については最近注目されています。脂肪細胞が様々な物質を分泌して「インスリン抵抗性」に大きく関与していることがわかってきました。
太っ
ていない時は、脂肪細胞から「アディポネクチン」というインスリンの働きをよくする物質が出ています。しかし太ってくると「アディポネクチン」の分泌が非
常に悪くなり、通常の1/2か1/3以下になってしまいます。そして逆にインスリンの働きを悪くする物質が分泌されて血糖値があがってきます。
ですから、適度な運動で内臓脂肪を燃や(肥満の解消)して、「アディポネクチン」の分泌を高めることが重要です。
歯周病が糖尿病を憎悪させます
歯周病は口の中の細菌により歯茎は炎症をおこす病気です。口の中に細菌が増えると細菌と戦う免疫細胞(マクロファージ)が働きます。その時、マクロファージが仲間を呼ぶために出す物質が炎症性物質である「TNFα」です。
しかし、この「TNFα」がインスリンの働きを弱めているのです。
歯周病の改善は、糖尿病の改善のために大切です。
|